TOP > 地域情報紙 > ヨコハマ想い vol.27 デザイナー 早園 マキさん

ヨコハマ想い


「蓮の花の精神で 」
デザイナー 早園 マキさん

profile
1972年横浜生まれ。横濱スカーフのシルクスクリーン製版型を作る職人の家庭で育つ。日本ファッション学院卒業後、職人として家業を手伝いながらモデルとしてコレクションや雑誌、TVCFなどで活躍。パリコレクションにも参加。それを機に、自身がデザイナーを務めるブランド「ROUROU」を立ち上げる。20通り以上に着回せる「横浜マルチスカーフ」は第2回神奈川なでしこブランドに認定、2016年「おもてなしセレクション」受賞。

パリコレ出演経験を持つモデルで、現在はデザイナーというご経歴。さぞかし「カッコいい」女性が現れるのかと思いきや、柔らかく包み込んでくれるような優しい笑顔でひょっこり登場した早園さん。横濱中華街に“ポンッ”と咲く蓮の花ように可憐なお店でお話を伺った。

原点は「横濱スカーフ」

 両親が横濱スカーフのシルクスクリーン製版型制作の会社を経営していました。デザイナーが描いたものをトレースし、シルクスクリーンにして納めるという仕事です。父が経営者、母が職人。母は先生として、周りの職人たちに教えていました。そういう環境で育ったので、自然と洋服に興味を持ち、スタイリストを目指して服飾の専門学校に進学しました。学校でモデルをやらせてもらう機会があり、それが面白くて。「モデルは若い時期にしかできない」とチャレンジしましたが、雑誌の専属モデルに応募しては落ち、応募しては落ち、の繰り返し。専門学校を卒業し、両親の会社を手伝いながらモデル養成学校に通いました。
 モデルとしての初仕事は、デザイナー津村耕佑さんのファッションショー。そのとき、ショーモデルを探されていたデザイナー山本耀司さんの目に留まり、7~8回オーディションを受けて合格、パリコレクションに連れて行ってもらいました。小柄で、超ジャパニーズなモデルを探されていたそうです(笑)。

日本のものってかっこいい

 しばらくはモデルをやりながら家業を手伝う毎日でした。そんなとき、小学校からの同級生が、シルクスクリーンの仕事に興味を持って、家にアルバイトに来ることになりました。それまではあまり話したことがなかったのですが、じっくり話してみたら意気投合。「自分で何かを始めたい」という夢が一致したのです。彼はシンガポールで育った経験を生かしてアジア的なもの、日本的なものを発信したかった。私は、耀司さんのパリコレに参加させてもらったときに、憧れだったヨーロッパで賞賛を受け、初めて日本のものってかっこいい、と日本人であることを誇りに思い、それを自分で発信したかった。「作るよりは自分でデザインして売ることができたらいいよね」と父に言われて育ったことも手伝って、自身のブランド「ROUROU」を立ち上げたのです。意気投合した彼は今、ROUROUの社長であり、主人でもあります。

誰も知らない国、朧朧国(ろうろうこく)

 アジアとヨーロッパが融合したような、アジアのどこかにある朧朧国。そこに争いはなく、精神的にも進化している理想郷…その誰も知らない国から商品をインポートするというコンセプトでROUROUは生まれました。
 何もかも未経験だった私たちは、いろいろなところで修業をさせていただき、私は見様見真似でデザインを描いていきました。6年間の準備期間を経て2000年、横浜中華街にお店をオープン(中区山下町130 ☎045-662-0466)。混沌とした所に、スッと蓮の花が咲いているような感じのお店を開く。中華街はまさに理想の場所でした。
 今でこそ東京ガールズコレクションなどのショーは一般の方でも見ることができますが、当時、関係者以外は見ることができませんでした。だったらみんなが見られるショーをやろうとか、原宿や代官山、上海にも出店するとか、NHKドラマ「上海タイフーン」(2008年)の脚本や衣装、演出にも携わらせていただきました。スタートから16年、様々なことにチャレンジしてきましたが、今は原点に戻り、中華街1店舗のみ。もっとROUROUのコンセプトを突き詰めたい。衣食住、トータルで展開していきたいと思っています。また、日本の産地にこだわって丁寧なものづくりを心掛けています。たとえば、刺繍は桐生、捺染プリントは横浜、デニムは岡山など、日本の良いものを発信し、伝統を守るお手伝いができればうれしいです。

染まらず、優しく、美しく

 横浜は港町。ファッションでも何でも、外国から受け入れてきた街です。そういう懐の広さや柔軟さを保ちつつ、プライドも持ち合わせる横浜の人って素敵だな、と思います。私にとって横浜は、家族との温かい思い出がたくさん詰まった大切な場所。この場所でずっと発信していきたい。蓮の花って、泥沼にあっても泥に染まらず、美しく咲いて、沼の水を浄化して、必要なくなったら散っていくという素晴らしい花なんですよ。私も蓮の花のように、染まらず、人に優しく接していきたい。ROUROUの服を着る人が優しく、元気になってくれたら、という思いでこれからも作り続けたい。楽しい、かわいいというワクワクを伝えていかないと。

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