TOP > 地域情報紙 > ヨコハマ想い vol.5 高田道場代表 高田延彦氏

ヨコハマ想い


「限られた時間を食べている 是、人生」
高田道場代表 高田 延彦氏

profile
1962年、横浜市生まれ。17歳で新日本プロレスに入団、翌年プロデビュー。UWFインターナショナル等のプロレス団体を経て、総合格闘技「PRIDE」に参戦、2002年に現役を退く。髙田道場主宰。タレントとして活躍するほか、全国の小学生を対象としたボランティアイベント「ダイヤモンド・キッズ・カレッジ」を開催している。

プロレス界のエースとして数多くの名勝負を残し、格闘技界にその名を刻んだ髙田延彦氏。現役を退いた今、全国各地で子どもたちとぶつかりあい、心と体を育てる活動に力を注ぐ。その優しさ溢れる大きな体から、子どもたちはたくさんの勇気と自信を受け取っている。

 生まれは磯子、鶴見と戸塚で育ちました。野球少年で長嶋茂雄さんに憧れ、野球選手になりたいと思っていました。ところが、テレビでアントニオ猪木さんを見て「おお、いいな!」と釘付けになりました。子どもがヒーローに憧れるのは特別なことではないです、画面から伝わってくるオーラ、エネルギーに惹かれたのでしょうね。

 そこからの私の夢はプロレスラーになること。特別な世界ですから、無理だ、危ないという声もありました。だけども夢を追いかけている時は熱くなっていますから、耳には入りませんでした。

 プロレスラーになるには、とにかく体を鍛えることでした。体が細かったので自己流で鍛えました。走り、ジャンプし、腕立てをして。アルバイトもトレーニングになるようにガテン系ばかりで、鉄筋屋や引っ越し、酒屋、米屋、いろいろやりました。どこかで聞いたこと、本で見たこと、どんなトレーニングでもがむしゃらに体づくりをして、入団テストに備えました。

17歳で新日本プロレスに入団しました。私の夢はプロレスラーになることでしたので、私の唯一の夢は叶った。それ以来、夢はみていないです。そこからは現実との戦い。特別体力があるわけでもない、ただ好きでやってきた人間の現実は、脱落せずにどうやって生き延びていくかです。

 入門してもやめるやつの方が多かった。入ってしばらくは新人の名前は覚えてくれない。“坊主”や “新弟子”が名前だったね。半年くらいしてようやく「お前さ、名前なんだった?」って。認めてもらえた証なんですね。現役時代は練習して昼寝して、また練習をして、六本木でワイワイ飲んで騒いで、その酒を汗で流して、また次の試合に向けて確かめる作業、猛烈にギラギラしていた時代でした。

 現役引退後、2006年から「ダイヤモンド・キッズ・カレッジ」という取り組みに力を入れています。「高田道場」でもそうですが、レスリングを通じて子どもたちに体を動かす楽しさ、本気で人とぶつかり合う気持ち良さを感じてもらいたいと全国で活動しています。我々のイベントに参加したことがきっかけで「体を動かしたい!」と感じてもらえれば、それだけで嬉しいね。

 レスリングは格闘技、親として子どもを預けるには少し勇気が要りますよね。怖い危ないというイメージが先に立つ。それでも信頼できる指導者の下、ルールがある中で取っ組み合いをさせる。そこでは日々勝ち負けがあり、苦しみ楽しみがあり、それが成長の材料になっていきます。心が強くなり、気付くと体も強くなっている。こういう体験を一番吸収できる年代に経験してもらいたいです。

 

 練習試合をすると小学校5、6年の女の子が、いかついおっちゃんにぶつかっていく。あり得ないでしょ。必死な子どもたちのエネルギーはものすごく強い。子どもたちはこういう瞬間の積み重ねを欲しがっているんじゃないのかな。

 自分にも子どもができたことで、子育てに関して皆も同じような思いや悩みがあると知りました。であれば、一緒にその思い悩みを共有して前に進めるような場所をつくれないかなと、活動に拍車がかかったのは確かですね。

 家では怖いお父さんのつもりですけど、ちょっとなめられてもいるかな。子どもは空気を読んで隙をついてくる。脇を甘くしているといいようにやられます(笑)。子どもは存在自体が不思議でおもしろいですね。彼らはどんな大人になるのか。不安でもあるけど楽しみが大きいです。目標に向かって時間を使える人になってほしいですね。

 人間は皆、刻一刻と平等に墓に向かっているわけです。時間を食べていることが人生そのものなんだ。意図的にだらっと過ごすもよし、でも集中するところは集中して有意義な時間を使おう。そう教えています。


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