TOP > 地域情報紙 > ヨコハマ想い vol.13 シャボン玉アーティスト・研究家 杉山弘之さん・輝行さん

ヨコハマ想い


「継続は力なり」
シャボン玉アーティスト・研究家
杉山弘之さん・輝行さん

profile
横浜市戸塚区出身。兄弟でシャボン玉ならではの表現を使ったテレビCMやドラマ・舞台演出を手がける。1983年には世界で初めてシャボン玉でギネス記録に認定されたほか、シャボン玉ショーを考案するなど、シャボン玉アートの先駆者。

幼いころシャボン玉の魅力に取りつかれた二人は、研究に研究を重ね、ついにはギネス認定を達成。素朴な遊びをアートへと高めた。虹色に透き通ったシャボン玉の向こうに見える子どもたちの笑顔が兄弟を支えてきた。

なんてキレイなんだろう

  シャボン玉を初めて見たのは、私たちが幼稚園児のころです。おじいさんが石けんに茶殻をまぜて、麦わらのストローで吹いてくれました。どんどん色が変化していき、パッと消えると何も残らない。「こんなにキレイなものは無い」と子ども心に思い、すっかりシャボン玉に魅了されました。
 子どものころは、遊びは自分で作るものでした。小学生になると、もっと大きいシャボン玉を作ろう、たくさん作ろうといろいろ試しました。
 大きいシャボン玉を作るため、太いストローの方がいいんじゃないか?と思い、畑からネギをとってきました。ねぎの内側のネバネバが溶けて、粘りのあるすごくいいシャボン玉ができました。得意になって教室でやっていたら、先生にひどく怒られました。なぜかって、シャボン玉がものすごくネギ臭かったのです(笑)。
 放課後もずっと外で遊んでいました。丈夫な液を作り、道具を作り、吹き続けているので、夕方になると頭がクラクラして、必ず気持ち悪くなっていました。

これからの時代はシャボン玉!?

 兄弟でいろいろと研究しました。たとえば、吹かなくても出来るなと気がついた。針金に毛糸を巻き付けて輪を作り、膜をはって振ればいい。今では当たり前だけれど、それまで日本には無かったんじゃないかな。
 大学生の時には、今のテレビ東京で「アイデア買います」という番組があり、自分たちのシャボン玉を応募しました。審査員はサトウハチロー先生や柳家金語楼師匠。その時に「君たちの発明はお金にならない。でも大人の男二人がシャボン玉をやるというメルヘンチックなギャップがいい」と言ってくれました。ちょうどカラーテレビが出たころで「シャボン玉の七色が見えるようになるんだよ。これからの時代に合っている。これから絶対いいよ」とも言われ自信を持ちました。

おもちゃからアートへ

 大学を卒業して兄弟で会社を作りました。そのころシャボン玉はただのおもちゃでした。世界中探してもシャボン玉のイメージを売る会社はどこにもない。当初は、親戚や友達が心配して、「生活できないよ」、「難しいよ」と言ってくれましたが、逆になにくそと思いました。
 シャボン玉ショーをやろうと売り込みをした時も「シャボン玉だけで30分はもたないよ」と、手描きの企画書をその場で引出しにしまわれたことも。悔しかったですね。
 初めてショーをやったのは、二子玉川園という遊園地でした。自分たちも初めて、お客さんも初めて。おそらく世界初です。とても盛り上がったのを覚えています。それから数年後には、以前断られた所からもオファーがくるようになりました。
 また、シャボン玉でもやっていけるんだ、と証明したくてギネスに挑戦しました。1983年には直径2mのシャボン玉を成功させ、ギネスブックにも載りました。
 いまでは、シャボン玉はアイドルのコンサートから映画、テレビ、スポーツなどの演出には欠かせないものになりました。

シャボン玉の向こうの笑顔

 約50年続けていますが、自信が無くなり辞めようかなと思ったこともありました。そんな時に、子どもたちが「明日もきてね」って言ってくれたのです。子どもは正直ですから、面白いと思ったものは、毎日、何回でも見たい。その言葉が大きな自信になりました。この時に、やっていけるなと思うことができました。
 現在も、年に150カ所ほど各地でシャボン玉ショーをやっています。小さな子どもから中学生、100歳の老人まで、だれでも楽しめます。
 養護学校や病院などは最優先で行くことにしています。車いすならいい方で、みんなベッドで寝ていることもあります。そこでも、シャボン玉を見せると嬉しそうな顔をしてくれて、人工呼吸器を付けている子も、みんなニコニコするんです。
 手紙をもらうこともあります。出演料として、保育園の子どもたちが何カ月もおやつを我慢し、金額は数万円ですがお金をためたと言うのです。ほかにも、どうしてもお金がないが、野菜はたくさんとれる、という所もありました。帰りは車が野菜でいっぱいでした。
 私たちは、たかがシャボン玉だけれど、50年続けてきた。こうして生活ができて、感動してくれる人がいる。私たちのシャボン玉を見たいと言ってくれる人がたくさんいることは何より幸せです。

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